吉川医薬経済レポート 2008年4月号[くすり点描]
承認近い抗体喘息薬Xolair
抗体喘息治療薬Xolair(一般名omalizumab)は国内で06年6月にNovartis Pharma社から申請されており,承認が近いと思われる.喘息の維持療法には,吸入ステロイドにβ2作動剤を加えた薬剤が主流となっているが,新しい喘息治療の選択肢として期待されている.ただ,07年に米国における市販後調査の結果からアナフィラキシーが問題となり,添付文書に黒枠警告が表示されることになった.このことは,国内における審査にも影響が出ると考えられる.XolairのDI情報をThe Medical Letterに依拠して表示する.
項目 内容 商品名
一般名
特徴Xolair
omalizumab
モノクローナル抗体(抗IgE抗体)開発企業 Genentech,Novartis,Tanoxの共同開発(後にTanoxはGenentechに買収された.)
日本ではNovartis Pharma適応 アレルゲンに反応し,吸入ステロイドでは症状が十分にコントロールできない中等度から重度の持続性喘息のある12歳以上の患者 剤型 皮下注射製剤 用法・用量 皮下注投与量は,患者の体重および総血清IgE濃度に応じて,1回150〜300 mgを4週間毎に1回から,1回225〜375 mgを2週間毎に1回までと異なる. 作用機序 多くの喘息患者では,アレルギー成分が,肥満細胞および好塩基球の受容体に結合した抗原特異的IgEを介して,ヒスタミン,ロイコトリエンや,その他のメディエーターを遊離し,粘膜の炎症や気道平滑筋の痙攣を増加させる. オマリズマブは循環血液中の遊離IgEと複合体を形成し,IgEが肥満細胞および好塩基球に結合するのを防止し,その結果メディエーターの遊離を防ぐ. 薬物動態 単回皮下投与後,7〜8日間で最大血清濃度に達する.本剤は肝臓で分解され,血清消失半減期は平均26日間である.
血清中の遊離IgE濃度は,初回投与後1時間以内に用量依存性に低下する.推奨量を用いた場合,次の投与までの間持続する遊離IgE濃度の低下は96%を超えると報告されている.本剤の投与を中止すると,遊離IgE濃度は約1年で治療前の値に戻る.臨床試験 喘息 − 皮膚アレルギー検査の結果2つ以上が陽性を示した青少年および成人の喘息患者317例を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲験試験で,本剤を2週間毎に1回,20週間静注投与したところ,遊離IgE濃度が約95%低下した.症状スコアおよびステロイドの使用はオマリズマブ群でやや低下したが,すべての低下が統計学的有意性を示したわけではなかった.喘息の増悪は,プラセボ群の45%,オマリズマブ群の約30%に認められた.
吸入ステロイドによる治療が必要で,皮膚アレルギー検査の結果,チリダニ,イヌ,またはネコ抗原が陽性を示した青少年および成人の喘息患者546例を対象とした7ヶ月間のプラセボ対照比較試験では,オマリズマブを2〜4週間毎に1回,7ヶ月間皮下注投与したところ,喘息の増悪が50%以上低下し,吸入ステロイドの使用が減少した.
同様の結果は,青少年および成人の重度アレルギー性喘息患者525例を対象とした28週間の試験でも報告されており,オマリズマブ群ではプラセボ群に比し喘息の増悪が減少し(21%対32%),吸入ステロイドおよびβ2作動薬の使用量が少なく,症状および肺機能の改善が認められた.アレルギー性鼻炎 − 季節性アレルギー性鼻炎患者に皮下注投与した試験でも,有用性が示されている.
シラカンバ花粉症患者251例を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲験試験において,オマリズマブ群の21%がアレルギーシーズン中症状が完全にコントロールされたと報告したのに対し,プラセボ群では同様の報告が2%であった.
ブタクサによる季節性アレルギー性鼻炎に対するオマリズマブの皮下注投与でも,有益性が報告されている.その他のアレルギー − ピーナッツなどのアレルゲンに対して生命を脅かすほどの反応を起こす患者の治療薬として評価した試験は行われていない.
副作用 3例の患者(静注投与1例、皮下注投与2例)において,投与後2時間以内に,他のアレルギー誘因が認められないアナフィラキシーまたはアナフィラキシー様反応が報告されたが,いずれの患者も生存した.
有害な薬物相互作用やオマリズマブ抗体の産生は報告されていない.
長期にわたる血清遊離IgE濃度の低下が,悪性腫瘍のリスク増大などの有害な作用を引き起こすかどうかは明らかではない.完了したすべての試験(ほんどの患者の観察期間は1年未満)において,悪性新生物(非メラノーマ皮膚癌を除く)は実薬群4127例中16例(0.4%),対照群2236例中2例(0.1%)に認められた.使用上の注意 オマリズマブの使用は,他の薬剤では十分なコントロールが不可能で且つ明らかにアレルギー成因を有する重度喘息患者に限定すべきである.アナフィラキシーと診断されたら直ちに治療できるよう,注入後2時間は患者を観察し,注入後数日間は患者にエピネフリン自己注射器(EpiPen、Twinject)を携帯させるべきである.
最近市販後調査からアナフィラキシー報告が問題となり米FDAからトクターレターが発行(2007.2),添付文書に黒枠警告が表示(2007.7)されることとなった.発生率は2%程度.開発動向 米国:03年6月承認,03年7月発売
欧州:05年10月承認
日本:06年6月申請その他 年間$10,000〜$12,000と,非常にコストが高い.
Drug Topics Red Book 2003年8月改訂版のAWPによると,Xolair 150 mgのコストは $541.25である.年間では約$10,000〜$12,000のコストがかかる.
The Medical Letter 日本語版,第19巻17号(03年8月18日),および第23巻15号(07年7月16日)による.
ステロイドやβ2作動剤など従来の対症療法ではコントロールできない重症の喘息患者に対する原因療法剤として期待されてきた.売上推移を表1.に示そう.表1. Xolairの売上推移(単位:百万米ドル)
製品名 一般名 企業 03 04 05 06 07 Xolair omalizumab Genentech 25 189 320 425 472 Xolair omalizumab Novartis - - 5 102 140 合計 25 189 325 527 612 発売以後順調な伸びを示し,07年にはGenentechとNovartisを合わせて600百万米ドルを超える大型製品に成長している.しかし,アナフィラキシーに対する警告を受けて今後はどのように推移するであろうか?Genentechの06年と07年の四半期ごとの売上推移を見てみよう.
表2. XolairのGenentech社四半期売上推移(単位:百万米ドル)
製品 企業 06 07 1st.q. 2nd.q. 3rd.q. 4th.q. 1st.q. 2nd.q. 3rd.q. 4th.q. Xolair Genentech 95 105 107 117 111 120 121 120 表2.で見ると,06年は伸長傾向が明らかであるが,07年に入ってアナフィラキシーの副作用が注目されるようになってからは,売上が横這い状況にあることが見られる.08年以後もこの傾向は続くのではなるまいか?
日本では,既述のようにNovartisの日本法人であるNovartis Pharmaが06年6月に申請している.2年近くを経過しており,審査も最終段階にあると予想され,承認へ向けての部会審査が近いのではあるまいか?
承認に際しては,当然アナフィラキシーについての使用上の注意,使用する医療機関,全例追跡などの条件付きとなるであろう.したがって,発売当初の伸びは遅々としたものになるであろうが,他の治療法では無効な重症患者への適応から,必要な医薬として慎重投与されながらも,次第に普及していくであろう.抗体医薬の新しい展開として今後に注目したい.
(2008.03.17.執筆YPC)
医薬品関係講習会のご案内◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 【3月開催 医薬関連セミナー】http://www.gijutu.co.jp/doc/s_med0803.htm ◇19日 【POC試験】Go/No Go判断 http://www.gijutu.co.jp/doc/s_803103.htm ◇26日 【ジェネリック医薬品】三極の市場・医療制度動向および選択基準 http://www.gijutu.co.jp/doc/s_803141.htm ◇27日 【コール数・資源配分】ディティーリングメッセージ http://www.gijutu.co.jp/doc/s_803111.htm ◇28日 【製薬企業R&D部門】研究者育成・評価と人事考課 http://www.gijutu.co.jp/doc/s_803147.htm ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
![]() 【書籍『医薬品研究開発におけるプロジェクトマネジメント手法』 発刊のお知らせ】 |
第1章 医薬品研究開発プロジェクトの価値評価手法と評価プロセス 第2章 リスクマネージメントの医薬品開発プロジェクトへの応用 第3章 研究開発におけるプロジェクトマネジメント実施手法 第4章 臨床開発におけるプロジェクトマネジメント実施手法 第5章 グローバル開発におけるプロジェクトマネジメント手法 第6章 医薬品開発プロジェクトにおける進捗管理 −コスト管理の観点から− 第7章 医薬品研究開発におけるプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の機能・役割 第8章 進捗の遅れないプロジェクトマネジメントシステム構築手法 第9章 コミュニケーションマネジメントとコンフリクトマネジメント 第10章 プロジェクトマネジメントにおける人財育成・教育手法 発刊:2008年2月29日(金)/体裁:B5判並製本 約150頁 ◎購入・詳細はこちら⇒ http://www.science-t.com/book/C022.htm ============================================== 主催:サイエンス&テクノロジー 【医薬品開発・製品戦略担当者向けセミナー・書籍】 http://www.science-t.com/pharm.htm ==============================================
![]() 『製薬企業における事業開発 (メガファーマ日本法人の視点で)』 |
万有製薬株式会社 事業開発室 竹岡 正博 先生 : :http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/AA080651.php 【その他、注目セミナー】 ◇6/10 【COI(利益相反)の基礎知識と実務対応の留意点】 詳細: http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/AC080655.php ◇6/16,17 【医薬品特許明細書の作成<教育研修講座>】 詳細: http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/AA080633.php ◇6/18 【ディジーズ・マネジメントの理論とビジネスモデル 】 詳細: http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/AA080618.php 2008年 5月開催予定一覧 http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/index5.php 2008年 6月開催予定一覧 http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/index6.php 2008年 7月開催予定一覧 http://www.johokiko.co.jp/seminar_medical/index7.php お問合せ 電話:03-5740-8755(医薬係) req_iyaku@johokiko.co.jp
| 相互リンクコーナー |
![]() |
ドイツの医学教材−人体模型・医療シミュレーター・医学チャート 「3Bサイエンティフィック」がお届けするメールマガジン 人体模型の使用例や先生方によるコラム、キャンペーン情報、 プレゼント企画など 無料購読: http://www.3bs.jp/top_m.htm |
2006年4月から発行元が株式会社フクミ メディカルメディアから株式会社メドレットに変更になりました。 それ以前のバックナンバーの発行元は当時のままです。 【発行元】 株式会社メドレット 【編集人】 小菅 博之 hkosuge@medmk.com 【著 者】 吉川 徹 E-mail:yoshkawa@ra2.so-net.ne.jp 【お問合せ】 内容に関する質問・仕事依頼は、著者に直接お問い合わせください。 336-0021 さいたま市南区別所2-32-13 吉川医薬研究所代表 吉川 徹 FAX(専用):048-865-1346 E-mail:yoshkawa@ra2.so-net.ne.jp 【著作権】 吉川 徹が著作権を保持します。 引用自由で、許諾を求める必要はありません。 但し主旨に沿わない改変はおやめください。 また引用された場合、1部寄贈いただければ幸いです。 【メルマガ以前の号】 http://www.medmk.com/mm/topic/news_tag.htm 【メルマガ購読・中止】 http://www.medmk.com/mm/topic/mailmg_ty.htm 【メルマガ配信】 まぐまぐ [マガジンID: 0000104198] 【注 意】 Hotmailで受信される方は、Outlook Express/Outlook で御覧ください。 Hotmailでhtmlメルマガを受信する場合、一部不具合が発生し、この吉川レポートの 場合も正常表示されません。 他のメールアカウントに転送してもokです。 【執筆希望者募集】 コンテンツ充実のため、執筆希望者を募集しております。 メルマガ・レポート等 ご興味がある方は、小菅 博之 hkosuge@medmk.com までご連絡下さい。