吉川医薬経済レポート 2008年4月号[データと情報]
07年欧米中堅企業業績のまとめ(08年3月発表まで)
欧米中堅企業のビジネスモデルは日本の中堅企業にとって参考になると考え,08年3月末までに発表された欧米中堅製薬企業11社の07年業績をまとめた.おおむね,50億米ドル台から20億米ドル台までの企業である.参考までに中外の数値を掲げた.[企業業績(米ドル表示)]
第1表. 07年日米欧製薬企業の業績 単位:金額,百万米ドル.増減,%
07年順位は3月末までに発表された日米欧企業の順位で,06年順位は昨年の当レポートの順位である.米ドル以外の現地通貨建ての発表値を別表にまとめ,換算レートを付記しておいた.
07 06 企業名 医療用 増減 総売上 増減 研開費 増減 純利益 増減 20 30 UCB 5293 -0.1 5293 -0.1 1150 -3.3 234 -59.1 21 25 Merck/Schering-Plough 5186 33.5 5186 33.5 - - - - 22 - Nycomed 5106 3.0 5106 3.0 416 -29.9 344 40.7 23 27 Solvay 3782 -0.4 13974 1.8 812 -1.2 1140 -1.3 24 34 Gilead 3733 44.2 3733 44.2 591 54.0 1615 - 25 32 Genzyme 3201 19.8 3814 19.7 732 12.6 480 - 26 33 Allergan 3105 17.7 3939 28.6 718 -32.0 499 - 27 31 中外 3084 5.7 3084 5.7 485 -0.7 359 4.3 28 - Alcon 2314 15.3 5600 14.4 564 10.2 1586 17.7 29 40 Lundbeck 2150 19.1 2150 19.1 428 11.7 346 59.9 30 37 Biogen IDEC 2137 20.0 3172 18.2 925 28.8 638 193.4 31 36 Watson 1784 -3.8 2497 26.1 145 10.5 141 - 次に,これらの企業の07年の売上3億米ドル以上の製品を表示する.06年の売上を併記した.
第2表 07年年商3億米ドル以上の製品 単位:百万米ドル
順位 商品名 一般名 薬効 企業名 06 07 特許失効 Pantozole/Protonix pantoprazole PPI Nycomed 2098 2466 Avonex interferon beta 多発性硬化症 Biogen IDEC 1707 1868 Truvada emtricitabine+tenofovir エイズ Gilead 1194 1589 Keppra levetiracetam てんかん UCB 1004 1498 Cipralex/Lexapro escitalopram うつ病 Lundbeck 961 1309 Botox botulinum toxinA 痙性斜頚 Allergan 982 1212 Cerezyme imiglucerase ゴーシェ病 Genzyme 1007 1133 Atripla efavirenz etc エイズ Gilead 206 903 Zyrtec/Cirrus cetirizine アレルギー性疾患 UCB 740 711 Fenofibrate fefnofibrate 高脂血症 Solvay 545 632 Viread tenofovir エイズ Gilead 689 613 Fabrazyme agalsidase ファブリー病 Genzyme 359 424 Hepsera adefovir B型肝炎 Gilead 230 303 中堅企業のビジネスモデルを分類して見よう.
1.大手総合化学企業の事業部
欧州にはかってこの分類に入る企業が多かった.しかし,07年にAkzo Nobelの事業部であったOrganonがスピンオフして,Schering Ploughに買収されたので,中堅ではSolvayのみとなってしまった.Solvayの医薬事業部はfenofibrate製剤を中心に運営されている.かって,低分子医薬品の生産・販売が主流であった頃は,総合化学企業のいわばファインケミカル事業部として意味を持っていたが,昨今の医薬品企業モデルは医薬品の開発・育薬に中心が移行している.大手総合化学企業の事業部というモデルは漸減していくと予想される.
2.特異な有機化合物の生産を中核とする企業
もはや大手になったが,AmgenやGenentechがこの分類に入る.Amgenは生産が困難であったが故に医薬品として使用できなかったEPOなどの特異な蛋白を企業化したし,GenentechはAvastinなどの抗癌抗体を企業化した.中堅ではGenzymeがCerezymeなど酵素補充療法剤として,酵素を企業化した.抗体医薬を中核とするビジネスモデルは,財力の問題はあるが,治療抗体というターゲットがあり,今後とも新規の企業が出現する可能性がある.
抗体医薬の次は,核酸医薬である.アンチセンス医薬は難行している.しかし,RNA干渉など今後の目標は多い.核酸医薬を中核とする企業出現の可能性は高い.3.特異な疾患用薬を中核とする企業
大手では,糖尿病に特化しているNovo Nordiskがこの分類に入る.中堅ではエイズなど抗ウイルス剤に特化しているGileadと,眼科領域に特化しているAlconがここに入る.日本では経皮消炎剤に特化している久光や,眼科領域の参天がここに入る.このモデルは独自の製剤技術を持つことが必須になっている.デバイスとの結合など,新たなビジネスチャンスは充分にある.今後新たな企業出現の可能性は充分にある.
4.ヒット製品の大型化に成功した企業
PantozoleのNycomed,AvonexのBiogen IDEC,KeppraとZyrtecのUCB,CipralexのLundbeck,BotoxのAllerganがこの範疇に入る.中堅企業の最も普通のモデルである.大型化のためには,業界・学会での知名度の高さと優れたグローバル化戦略の両方が必須である.(PantozoleはAltanaが開発したが,AltanaをNycomedが買収した.)
今後とも,このモデルの企業の出現可能性は高い.ただ,このモデルの欠点は,大型化成功品にも寿命があり,特許失効などで,一端斜陽に転ずると企業の存続にも係わってくることである.Zyrtecの斜陽化に合わせてKeppraを開発し,企業存続に成功している例は,困難ではあるが,見習うべきである.
極めて大雑把ではあるが,欧米の中堅企業について俯瞰し,私見を加えた.日本の中堅企業のビジネスモデルを考える上で,幾分とも参考になれば幸いである.
最後に現地通貨による業績発表値を記載する.
[企業業績(現地通貨表示)]
[現地通貨建て発表値](単位:金額,百万ユーロ.増減,%)(1米ドル=0.685ユーロで換算) 07 06 企業名 医療用 増減 総売上 増減 研開費 増減 純利益 増減 20 30 UCB 3626 -0.1 3626 -0.1 788 -3.3 160 -59.1 22 - Nycomed 3497 3.0 3497 3.0 285 -29.9 236 40.7 23 27 Solvay 2591 -0.4 9572 1.8 556 -1.2 781 -1.3 [現地通貨建て発表値](単位:金額,百万デンマーククローネ.増減,%)(1米ドル=5.11デンマーククローネで換算) 07 06 企業名 医療用 増減 総売上 増減 研開費 増減 純利益 増減 29 40 Lundbeck 10985 19.1 10985 19.1 2187 11.7 1770 59.9 [現地通貨建て発表値](単位:金額,億円.増減,%)(1米ドル=111.8円で換算) 07 06 企業名 医療用 増減 総売上 増減 研開費 増減 純利益 増減 27 31 中外 3448 5.7 3448 5.7 542 -0.7 401 4.3
(2008.03.31.執筆YPC)
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