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2008年4月30日 No288
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INDEX
01【理科】 ◆「理科が好き」と、子どもは言うけれど…
   本当に理科が好き?
  〜3年『日時計を作ろう』の実践を通して〜
  木下幸夫@神戸大学発達科学部附属住吉小学校

02【総合】 ◆学びの成果と自己とのつながりを実感することができる
   総合的な学習の時間とは
   藤上真弓@山口大学教育学部附属光小学校  

01.【理科】◆「理科が好き」と、子どもは言うけれど…
         本当に理科が好き?
          〜3年『日時計を作ろう』の実践を通して〜
         木下幸夫@神戸大学発達科学部附属住吉小学校  

1 はじめに
(1) 理科が好きって本当?
 観察や実験といった理科特有の活動はそれだけで楽しいものです。「理科が好き」と言う子どもの気持ちも分かります。ですが、その「好き」の言葉に教師は安心していいのでしょうか。科学的根拠が複雑化すれば、「好き」の針はいつ逆に振れるか分かりません。理科離れを広げないためにも、理科がスタートする3年生から、学ぶ本当の楽しさを味わわせたいものです。

(2) 分かっているつもり
 事例に挙げる日光の単元は、「太陽や陰は動くこと。」「日向は暖かいこと。」など、既有の事柄を多く扱います。このような「既に知っている。」には大きな落とし穴があります。本来、子どもの中には「分かっていること」と「分からないこと」が混在しており、その境界線は曖昧であると考えます。(例:太陽が動くことは知っているが、どんな動き方をするかは知らない。そんな、「知っていること」と「事実」との境界線への認識が曖昧であるということ等。) 子どもたちの「知っているつもり」や「分かっているつもり」に気づかせ、科学的な事実や根拠を明らかにしていくことが大事です。そして、「学びのプロセス」を繰り返し体験させることが不可欠です。

 「考えたり、実験したり、話し合ったりすると、知らない・分からないことが見えてくるよ。だから理科は楽しいよ。」と語り、知的好奇心を自ら喚起する子どもの姿を求めていきたいと考えています。

2 実感を伴う子どもの学び
(1) 科学的に追究する面白さ
 実証性、再現性、客観性。この三条件を満たすものを「科学的である」といいます。学びの対象とする自然の事物・現象についての知識や理解は科学的でなければなりません。学習前の子どもたちの見方や考え方はあまり科学的ではありません。「私の認識は正しくなかったかもしれない。」と気付く場面に出合わせることで子どもたちの探究心が湧きます。(例:本事例では、陰の長さを、午後→正午→午前と、時系列の逆に予想させた。すると、「朝の陰は短い」という誤った認識が表出された。)
 対象に対する内発的な課題意識を持って、問題解決のプロセス(※)を経験させてやりたいものです。※[課題発見]→[予想・仮説]→[観察・実験]→[結果]→[考察]の、一連の学びのプロセス。

(2)知識を活用できる喜び
 学びのプロセスによって得られた知識は、子どもが自らつくり上げた知識です。知識を活用する場面を本事例では次のように設けました。導入で日時計への興味を持たせ、「マイ日時計を作ること」を目標としました。太陽と陰の動きを調べ、規則性を見出す活動は、「日時計作り」に必要な活動として位置付きます。

陰の動きの規則性を調べて、日時計を作る。


3 子どもの思考に寄り添って
(1) 思考を遮る先行知識
 ♪西から昇ったお日様が東へ沈む〜♪ 反対言葉の歌詞が人気の、TVアニメ『天才バカボン』の歌です。「反対言葉だから…。太陽は東から昇るんだね!」と覚えた子どもも多くいます。バカボンは一例ですが、太陽の東西移動は、言葉の知識としての認知です(観察前であれば)。一方、単に太陽の移動は感覚的な認知です。

 陰がなぜ伸縮するのかを追究した際、「太陽が東から西へ動くから」と誤って答えた子どもが結構いました。高度変化が事実であり、太陽の動き→東西移動、という先行知識が入っているために起こる誤りです。純粋に陰の伸縮という自然事象と対峙していたら、東西移動という概念が出てくる余地はないでしょう。先行知識に頼ってしまうと、真っ直ぐに課題に立ち向かえないことがあるのです。

(2) 学びの対象を意識化
 陰の向きを捉えるために、陰踏み鬼を午前中に実施しました。子どもたちは正方形のコート西側の白線上に並びました。陰は西に延びるため、自分の陰をコートの外に出すことができるのです。陰を踏ませない作戦です。

(3) 課題の発見と追究
 A 課題を見出す
 翌日は正午に陰踏み鬼を実施しました。昨日と今日とでは実施時刻が異なるため、今度は子どもたちは北側の白線上に並びました。北側に並ぶと自分の陰が踏まれないですみます。次第に子どもたちは、陰の向きの変化に着目しました。「昨日と今日とでは陰の向きが変わったよ。」「朝と昼だから、陰の向きが変わったんじゃないかな。」陰の変化は1日経過したから起こったのか、朝と昼の違いで起こったのか。この話し合いは、「陰の変化の規則性」を見出していく大切な視点であり、後の「日時計作り」にも関係します。「午後も陰踏み鬼をやらせて」と子どもが訴えてきました。陰踏み鬼はもう単なる遊びではありません。子どもたちの追究が始まりました。

 B さらに次の課題を見出す
 午後にも観察したことで、影の向きの変化は、1日の中(正午と午後)で起こることが分かりました。次に、新たな視点が出ました。陰の長さの変化です。「昼の陰に比べて、午後は陰は長いよ。」追究は次の課題へと進みました。

 C 課題を焦点化し、さらに追究する
 「朝の陰の長さはどうだろう?」と課題が焦点化されました。昨日は朝、陰踏み鬼をしていたのですが、長さには着目していなかった子どもたちは記憶を辿っても思い出せません。3分の2の児童が、「朝の陰は短い」と予想しました。理由は、「午後は長い。昼は短い。だから朝は、もっと短かいはず」と言いました。正午と午後の観察データから、朝の陰の長さは短いと短絡的に予想したのです。
 翌朝、大きな期待を抱いて観察を実施しました。「あれれ〜!?」。結果の意外性に子どもたちは驚きました。短いどころか、朝の陰は昼より長かったのです。

(4) 考察というプロセス
 A 得られた結果から考察
 なぜ陰の長さは1日の中で、長→短→長と変化するのでしょうか?子どもたちの予想の多くは、「太陽が東から西へ動くから。」(前述)というものでした。その他には、「太陽の光の強さが変わるから。」「太陽が高くなったり低くなったりするから。」などの予想が出てきました。

 B 検証実験
 子どもたちの予想を検証する実験を、懐中電灯を使って行いました。まずは太陽の移動と陰の向き・長さとの関係を確かめました。また光の強さと陰の長さとの関係については、懐中電灯と投光器を用いて光の明るさに強弱を付け比較検証実験をしました。「比較する力」は3年生で養いたいとされる問題解決能力です。(理科では『養いたい問題解決能力』が系統的に各学年で位置付けられています。)これらの検証実験によって陰の変化の規則性への理解を深めることができました。

4 子どもの変容
 最初は、ものづくりや遊びに対する興味だけだった子どもたちが、次第に語り始めました。「夕方の陰は東を向くはずだ。だって…。」「発見したよ!陰の長さが…。」そんな語りを価値付けていくと、一人の探究が学級全体へと広がっていきました。翌朝、「先生、予想を変えてもいい?」という子どもがいました。(彼の探究活動は一日で熟成されたのでしょう。」自分の先行知識や思い込みの殻を破り、科学の探究を始める子どもたちの姿をそこに見ることができました。

5 教師の振り返り
 授業後、陰踏み鬼の様子を撮影したビデオを私は見ていました。1人の男児がコート内で寝転んでいたことに初めて気付きます。授業中に気付いていたら何と声をかけていただろうとふり返りました。「参加しなさい」と注意していたと思うのです。実は彼は、横たわることで自分の体の陰に入っていたことに気付きました。私を大きく超えた子どもの存在に鳥肌が立ちました。素晴らしいと、取り上げられなかったことを悔やみます。授業は教えるばかりではなく、子どもから引き出すという姿勢の大切さを痛感した瞬間でありました。子どもの「行動」は、必ず「思考」との因果関係を持ちます。思考を読み取り、紡いでいくことが、授業における教師の役割であると再確認させられました。

6 やっぱり理科が好き
 知的好奇心が支える探究の末に実感的な理解が得られます。知識の活用を通して科学的認識が深まっていきます。科学の喜びや楽しさを知った子どもたちから「理科が好き」という言葉を聞きたいと思うのです。
 頭と体をフルに使って、自らの世界を広げていこうとする子どもたち。本来持つ「素朴な見方や考え方」を認めながら、「科学的な見方や考え方」へと変容していく授業づくりに努めていきたいと思っています。

(前任校、西宮市立小松小学校での実践をもとに執筆しています。)
sawayaka-yukio@port.kobe-u.ac.jp
 
    
02.【総合】◆学びの成果と自己とのつながりを実感することができる
                  総合的な学習の時間とは
         藤上真弓@山口大学教育学部附属光小学校   
 

1 単元づくりのポイント
 現在の子どもの学びの事実をもとにして,以下の点に留意して単元を計画しています。

○子どもたち一人一人が,追求していく意味や価値を感じることができるか

○子どもたちに一人一人に,学ぶ上で適度な「かべ」が生じていきそうか

○学び終えた後,子どもたち一人一人が充実感や成就感を味わうことができるか

○子どもたち一人一人が,対象や自己との向き合い方(学び方)に新たな視点を増やしたり,今までもっていた視点を深めたりすることができるか

○子どもたち一人一人が,学びの成果を自分の生活や生き方につなげていく
 ことができるか

 特に,対象(人・物・出来事)と向き合うことによって得た認識を,どのように自己の生き方につないでいくことができるか,ということを常に意識して単元を計画しています。

2 実践事例「地球人の品格」(第5学年)

1) 生きる方向性を照らし出すために
 生きる方向性を照らし出すきっかけになるのが,見方・考え方や認識に,吟味する材料を提供したり,楔(くさび)の役割を果たしたりする体験です。そのような体験の意味や価値,体験で変容した見方・考え方や認識を自覚する術(すべ)を身につければ,子どもは,生きる方向性を照らし出すことができるでしょう。

 私は,生きる方向性を照らし出す指針となる「自分なりの応え」をキーワードにして学びを構想しています。

「自分なりの応え」は,「自分見つめの時間」のなかで書くことによって対象に対する自分の見方・考え方や認識を整理し,「□は,ズバリ!○○である」と言い切ったものです。

 これは,言葉で表現させたものですが,子どもが追求を進めたり,他者と語り合ったりするなど,体験から感じた思いや願い,見方・考え方などを整理したものです。だから,体験が充実していないことには,子どもがそこで表現する内容に,自分の言葉など表出されるはずもありません。教師は,子どもにどのような体験を設定していったらよいのか,しっかりと考えておかねばなりません。

 この単元では,子どもは,追求活動のその時点その時点での対象についての見方・考え方や認識を,いったん「地球人の品格とは,ズバリ!○○である」とまとめました。そして,その「自分なりの応え」とそれを導き出した追求活動から得た根拠をもとに,地球人に求められる買い方・食べ方・暮らし方などについて繰り返し語り合い,みんなの「共通の応え」として「地球人の品格○か条」をまとめました。そうすることで,自分の生活は,地球環境や人々のつながりに支えられ,自分の消費活動の在り方が地球環境を変えることを実感していきました。

 語り合った後には,再び「自分なりの応え」をまとめ,それが語り合う前後では,どのように変容したり,強固になったりしたのかを自覚できるようにしていきました。

  この単元における「自分なりの応え」は,今後,自分が置かれた状況のなかで,より積極的に地球環境の保全・創造に参画の在り方を探り続けながら,地球人として生きる方向性を照らし出していくと考えました。

2) 環境問題を取り扱う学びで陥ってはならない罠って?
 ところで,環境問題を扱う学びを実践していく際に,子どもが陥ってしまってはいけない見方・考え方とは,いったいどんなものでしょうか?
 それは,以下の見方・考え方です。
○ 環境をきれいにしたいと思う自分が,実は,ゴミや汚れた排水を出して環境を汚し,豊かな環境から生み出されているものを犠牲にして生きざるを得ない存在であることに気づかず,自分の生活とはかけ離れたところにある問題のみに目が向いてしまう
○ 自分の生活の在り方には目が向かず,他者批判に走ってしまう

 つまり,子どもに人間である自分も矛盾した存在であると気づかせる体験が必要になってきます。それなしには,環境問題を取り扱う単元での追求活動で導き出した「自分なりの応え」が,より客観的な生きる方向性を照らし出すことは難しくなってしまうでしょう。

 この単元においても,本時までの追求活動から,「国のきまりをつくれば解決できる」,「自然を壊す行動をする人が悪い」のような自分や自分の生活の在り方と環境問題とのつながりをあまり考慮に入れない「自分なりの応え」をもつ子どもも中にはいました。

 この時こそ,教師の手だてで,この単元のねらいの達成に向けて方向づけを行っていかねばなりません。

 教師は,多様な立場から「地球人の品格」をとらえ,買い方・食べ方・暮らし方などと地球の関係に気づいている子どもを提案者として選び,以下のような語り合いの場を設定していきました。

地球環境の保全・創造への参画の在り方とその活動の持続可能性に着目し,多様な立場に置き換えて検討させる

 本時の流れにつきましては,20年度研究会(6月27日)から販売します本校共同研究『言語活動の充実を図る「視点と方法」のある授業〜「とらえ方ツール」で授業を変える〜』山口大学教育学部附属光小学校 著(明治図書)に載っています。

3) 現実の社会に役立っている自分を実感するために
 学びの成果を自己の生き方につないでいくことはもちろん重要ですが,社会を構成する一員として,自分や仲間が見出した指針「自分なりの応え」を他者にも役立つものに加工し,積極的に社会参画していこうとすることが大切です。
 この単元の終末に,子どもたちは,「簡単に,無理なくできる」というキーワードのものに,地球にも人にもやさしい生活の在り方を伝えていくための,パンフレットを作成していきました。
 その際に,以下の点を検討させました
○ 配布する対象は誰なのか
○ 何を伝えるのか
○ どんな方法を使ったらよいのか  など

 それは,誰をターゲットにするかによって,伝えたいことが変わってきて,掲載する内容も方法にも違いが生じるからです。

右の図は,子どもたちが,製作したパンフレットの表紙です。(本校ホームページの研究・総合の部屋にパフレットは,掲載していますので,興味のある方はご覧ください。)

 さらに,そのパンフレットを見て,実践してくださった方が多かったことで,意欲が盛り上がり,自分達で,「エコ漫画」や「エコグッズ」などを製作して,附属小の祭の際に,商品として売り出しました。(買うときのお金は,プルトップ)

 以上,実践の一部をご紹介しましたが,平成20年度山口大学教育学部附属光学園初等教育・中等教育研究発表大会を,平成20年6月27日(金)に行います。
 以下が,本年次のテーマです。

「真理を追究し続ける個」を育てる教育の創造(四年次)
〜「追究スタイル」で学びのつながりを確かなものにする授業と単元構成〜

 小中連携研究四年次を迎えます。多数の皆様にご参会いただき,ご指導ご助言をいただけると幸いです。
◇小中学校公開授業

◇研究発表

◇教科等別分科会 (ちゃぶ台方式)

◇講演 「今,求められる授業設計力とは
      〜習得型,活用型,探究型の学びを探る〜」
  講師: 中教審専門委員,ノートルダム女子大学心理学部長
         加 藤  明 先生 

〒743-0007 山口県光市室積8−4−1
     *小学校 0833-78-0124 (FAX 0833-75-1507)
             担当:研究主任 藤上真弓
     *中学校 0833-78-0007 (FAX 0833-75-1509)
             担当:研究主任 原田敦史
*詳細は,5月の第2次案内でお知らせします。
*申し込みは、平成20年5月から受け付けます。詳しくは2次案内でお知らせい
 たします。
*WEBによる申し込みも可能です。
 
 

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