★保険&年金基礎知識〜労働契約法について〜
労働契約法が成立するまで、労働基準法、労動組合法、労働関係調整法
を労働三法と総称してきました。
上記労働法は、使用者VS労働者という対立構図の法律で、この三法の
「労働者」は個々の労働者をさすものではないケースが殆どでした。
しかし、この労働三法に加えて新たに出来たこの法律上の「労働者」は、
使用者と労働契約を締結して働く、個々の労働者をさしています。
つまり労働契約法は、使用者と「個々の」労働者間の紛争を未然に防ぐ
予防効果を狙った法律と言えます。
●労働契約法の内容
・目的条文 労働契約に関する基本的事項を定め合理的な
労働条件の決定・変更が行われ労使関係の
安定に資すること
・労働者の定義 使用者に使用され、「賃金」を支払われるもの
・労働契約の原則 労働者と使用者が対等の立場における
合意の下に締結、変更するべきもの
・労働契約の内容の理解の促進
使用者に労働条件の明示義務だけではなく
その内容を理解させる努力規定が設けられた。
・労働契約と就業規則 労働契約の内容を就業規則で定める
労働条件とすることはOK。ただし、
合理的な労働条件を定める就業規則が
周知されている場合。
・労働契約の内容の変更 労働者と使用者の合意があればOK
・労働契約の内容の変更の例外 労働者との合意なしに、就業規則を
変更することで労働条件を変更することは
基本×。しかし、変更後の就業規則の
周知、不利益等が合理的な範囲内で
あればOK。
・法律>労働協約>就業規則>労働契約 この図式は今までどおり
・出向 出向命令が必要性、対象労働者の選定等に照らして、使用者の
権利の濫用に当たると考えられる時は無効。
・解雇 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ
ない場合は,無効
・有期労働契約 やむを得ない事情がある場合でなければ、契約期間中の
解雇は無効。
必要以上に短い契約期間を定め反復契約更新を
しないよう配慮義務。
●西尾の解説
いかがでしょう?労働契約法の内容、お分かりいただけましたか?
労働契約法は、日々の労働条件が即改善される、というような法律では
ないので、即ここがこう変わる、という訳ではありません。
ただし、この法律がある、ということを働く皆様に意識していただくことで
個々の労働紛争を未然に防ぐ効果が今後出てくることを私は期待
しています。
この労働契約法のキーワードは「均衡」と「合理性」です。
現在の雇用環境ですが、所謂正社員、契約社員(有期労働契約で
働く人)、派遣社員、パートタイマー、アルバイト、請負等様々な
労働形態で働いています。
それぞれの働く人の労働条件を定めて明示した上で締結するのが
「労働契約」ですが、
本当に、使用者と対等の立場で、労働契約の内容をしっかり理解した上で
合意の上に労働契約がなされているか、というと、とても疑問です。
正社員の方もそうでしょうが、他の労働形態で働く方の中には
この労働条件に納得は出来ないが、合意しないと働く場がないから
合意しているというケースも多いと思います。
その上、正社員とその他の労働形態で働く方々の間には、
大きな格差があります。
ここに、なんとか「均衡」を。
そして、労働契約の内容が「合理性」を備えたもので、そして
労使対等の立場で、労働契約が締結できるように。
と、この法律は意図しています。
しかし、この「労働契約法」、強行法ではないので、法的拘束力も罰則も
ありません。この法律による行政監督もありません。
その法律が、どんなときに役立つか?というと。
実は、この法律、過去の労働紛争での判例の集大成なのです。
ですから、実効性は即ないものの、あなた(労働者)と使用者側と間で
何らかの紛争が発生した場合、労働契約を真正に締結し、それに
反してはいない場合、使用者側に異議を申し立てる、根拠となる
法律なのです。
そのためにも、何度も言うようですが、
労働契約の内容、労働契約に附随する特約事項等は、よく把握し
就業規則にも目を通しておくことが必要です。
また、日々の業務を遂行していく上で、法令や社内規則を遵守し、
使用者側に隙を見せない努力も必要です。
少なくとも、度重なる遅刻や無断欠勤、健康診断の不受診などで始末書を
提出するような行動は、労働紛争になった際にとても不利です。
労働契約法は、使用者に「均衡」を図る努力、合理的な労働条件を
定め明示し遵守すること、合理的な労働契約を遵守すること
を求めているだけではありません。
労働者保護が根底にある法律ではありますが、労働者にも法令遵守、
「合理的な」労働契約や就業規則の遵守を求めているのです。