メールマガジン「一風斎の趣味的生活」  
HTML版第第164号
(通算第181号)

2007年11月11日

Copyright ©2007 by IPPUHSAI. All rights reserved.




  今回も、事情により、通常の記事はお休み。

  代りに小説『群才の人』「第5章 外征」その7をお送りします。



   群才の人・第5章 外征 その7
山県

 先ほど述べたように、陸軍としては旅順は包囲するだけで充分だったのであるが、海軍からの要請があり、旅順艦隊を港から追い出すか、無力化する必要になってきた。しかし、言うは易く、行なうは難しじゃ。
 日清の役の時とは異なり、旅順要塞はペトンで固められ、機関銃や鉄条網で厳重に守られた近代的な要塞となっていた。
 そこへ乃木は、真っ正直な攻撃をしかけたのだから、堪ったものではない。
 八月の第一回攻撃では、一個師団分の被害を受けて、攻撃中止となった。
 十月の第二回攻撃では、多少頭を使い、二十八サンチ砲で攻撃した後の突撃となったが、これも失敗、千人もの死者を出してしもうた。
 十一月の第三回攻撃が、有名な白襷隊の突撃があった戦闘じゃな。第七師団の増援も受け、総攻撃となったわけじゃが、これも防衛線を突破できずに終わったが、二百三高地の占領という戦略的に重要な成果を上げることはできた。
 内地では、乃木の無能を誹る声が高まるばかりじゃった。
 この辺りまでは、乃木の責任感と忠誠心とが裏目に出た形。
 天子さまもご心配なさって、第三回の総攻撃の前には、特に乃木に以下のような勅語を下された。

「旅順要塞ハ、敵ガ天険ニ加工シテ、金湯ト為シタル所ナリ。其ノ攻略ノ容易ナラザルハ、固ヨリ怪シムニ足ラズ。朕深ク爾等(なんじら)ノ労苦ヲ察シ、日夜軫念(しんねん)ニ堪ヘズ。今ヤ陸海軍ノ状況ハ、旅順攻撃ノ機ヲ緩フスルヲ得ザルモノアリ。此時ニ当リ、第三軍総攻撃ノ挙アルヲ聞キ、其ノ時機ヲ得タルヲ喜ビ、成功ヲ望ム情甚ダ切ナリ。爾等将卒夫レ自愛努力セヨ。」

「爾等将卒夫レ自愛努力セヨ」という辺り、乃木に対する天子さまの情愛が、よく現れているじゃろう。おそらく、天子さまは、乃木が、お預かりした兵を大勢無駄死にさせた責任を取って自害するのでは、ともご心配されたと拝察する。
 この間、アシも何度か書簡を乃木に送り、激励をしたもんじゃ。
 十一月には、アシが七言絶句を送ったところ、副官が暗号電報と間違えて、乃木に「どうしても読めません」と言った、というような可笑しな話もある。

〈つづく〉


このメールマガジンは『まぐまぐ!』(http://www.mag2.com/)を利用して発行しています。
配信を中止したい方の連絡先●http://www.mag2.com/m/0000130673.htm
発行者のWebサイト●http://www.ippusai.com/shumiSp_IE/shumi.htm
発行者のE-maill●root@ippusai.com(『一風斎の趣味的生活』編集部)




編集部からのお知らせ


風邪をひくとだらしないもので、
まともな読書や書き物ができません。
どうやらこの冬も、風邪が流行り始めたようです。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

それでは、例によってお知らせを。




1.ブログ
一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

先週の主な内容は、

Book Review

最近の拾い読みから(193) ―『宣告』

CD Review

頭痛、発熱、倦怠感、食欲不振……。

熱は下がったものの……。

Criticism

歴史書の文体と小説の文体 その3

歴史書の文体と小説の文体 その4

歴史書の文体と小説の文体 その5

Essay

『玉葉』と『断腸亭日乗』

です。



基本的に毎日新しい記事を掲載しています。


2. ホームページ
「一風斎の趣味的生活」



メールマガジン同様、ブログ・ホームページもよろしくお願いいたします。


2007年11月11日

一風斎啓白




メールマガジン本文へ戻る。